松下幸之助「子育て論」②

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すべての子どもが学校で優等生になることはできません。
けれども、〝人間としての優等生〟にはなれます。何よりそれが、尊いことなのです。

           『親として大切なこと』(PHP 文庫 松下幸之助)より一部抜粋


わが子を一人前の立派な人間に育てたいという願いは、万国の親の共通の願いだと思い
ます。特に、学校生活においては、わが子が学校で優等生になってほしいと期待される親
が多いと思います。
しかし、そうはいっても、お子さんの中には、勉強が得意でない子や生まれつき体が丈
夫でなく、集中力も散漫なお子さんもいることと思います。
ですから、どの子も人並み外れた優等生になる、ということは、ほぼ不可能に近いもの
だといわなければなりません。これは一面、仕方のないことだと思います。
親たるものは、この点をよく心得て、子どもの学力や体力等を向上させるように努める
にしても、子どもの素質や能力以上に過度に期待をかけすぎては、その子本来のものを損
なう恐れがあると心得なければなりません。


それよりも親として心得てほしいことは、学校で優等生になることもさることながら、
人間としての優等生になることではないかと思うのです。
では、〝人間としての優等生〟とは、具体的にどういう人か。
それは、人間らしく生きるための基本的な知識なり良識をしっかりと身につけた上で、
自分の持っている素質、才能というものを素直に生かしている人だということです。
人間らしく生きるための知識や良識とは、「人として生きるために必要な知識や道徳」の
こと。善悪の判断ができ、良心に基づき、人が人の間で気持ちよく生活ができるために必
要となる知識やモラルを持って生きていくことです。


その上で、学問に秀でたものは、その素質や能力を生かして学者になって社会に役立つ
研究を進める。手先が器用でモノ作りが好きなものは、大工やエンジニアとなって、立派
な建築物や便利な機械をつくり上げる。諸売の好きなものは、セールスマンや商店を営み、
モノを売ることによって人のために役立っていく。
そういう人が、〝人間としての優等生〟になることであると思うのです。
最後に、親として、わが子を〝人間としての優等生〟として育てていくための心構えを
お伝えします。
それは何かといいますと、〝子どもを素直な心の持ち主に育てるように努めること〟で
す。
素直で、私心のない心の持ち主に育てるならば、何が善で何が悪かを自主的に誤りなく
判断できるようになりますでしょうし、自分の持ち味を生かすことの大切さ、尊さという
ものを理解して、勇気と自信を持って自分の道を歩んでいけることになるはずです。
素直な心、というものは、人を強くし正しく聡明にしていくものだと思うのです。
親も学校の先生も、社会の有識者も、子どもを教え育てていく立場にある大人全部が、
素直さを大切にした子どもの教育やしつけを、熱意をもって取り組んでいくことがより大
切なことになるのではないでしょうか。
まずは〝人間としての優等生〟をめざしていくこと。それが子育てにおいて肝要である
ことと思います。


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『編 集 後 記』
成績が一番でないと気がすまない、通知簿の「A」の数が一つでも増えていないと気が
すまない、というお子さんや保護者がたまにいます。まさに優等生を目指し、少しでもよ
りよい成果を出すことを求める風潮が、いまだに多いのかなと思います。
そのような親御さんにこそ、この松下幸之助氏の〝人間としての優等生〟の意味をかみ
しめていただきたいものだと思います。
昔から「素直はお得」という言葉があります。損得勘定で行動しがちな昨今ではありま
すが、オリンピックの名監督も、甲子園で名将と言われた監督も、すべて伸びる選手の第
一項目が「素直さ」であります。損得で判断するのではなく、素のままの良心に垂らし合
わせて行動できる子どもをこそ、育てていきたいものである、と思います。
今回のこの言葉が、校長先生であられる皆様に何か響くものがあれば幸いです。
ご感想やご意見などありましたら、メール等でお寄せいただけると幸いです。
ありがとうございました。
                      

学校のミカタ・松下教育研究

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